これは module_FrontPageArticle.txt です。
お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書)
勝間 和代
●タイトルだけの本ではないし、ただの「しくみ本」を超えている
タイトルの「脅かし」で、またかと思って読んだが、かなりというか、そうとうにまともな本である。
金融リテラシーの基本と実践、と謳っているだけのことはあると思った。
いわゆる「しくみがわかる」本から一歩踏み込んで、「どうすればソンかトクか」という視点が
全体を貫いている。
完全なハウツー書とは言えないかもしれないが、金融の全体的なしくみが把握でき、それ
ぞれの金融商品がどういう特徴を持ち、結果的にどうすれば(読者にとって)メリットがあるかが
ほぼつかめる。
お手軽な新書が多い中、久々の読み応えとわかりやすさだった。
文章も比較的わかりやすくこなれているので、普段ビジネス書などを読み慣れてない人にも
すんなりはいっていけるのではないだろうか。
●勉強しないで投資するなら「お金は銀行に預けておきなさい」
ある意味、日本人版の「金持ち父さん?本」といったところでしょうか。
あの本を購入後に金融商品に手を出して、安易に夢見て負けた方は大勢いるかと思います。
この本はリスクに対しての提言や金融商品の具体例及び実践例、また「簡単に儲けることの
できる商品などない」というようなことをきちんと述べている点で好感が持てました。
取り上げられていた銀行のローンの例にしても、金融の基礎知識があるかないかではとても
差が出ますし、投資云々に興味がなくても、極端な話「甘い話に騙されないため」には金融や
数字に強くなるべきだな、と本書を見てあらためて感じました。
投資商品として「REIT」にも著者は触れています。
おそらく、半年後?一年後あたりには、書店の一角を陣取るようになるかとは思われますが、
勉強しないてただ儲けようと考えている方ならば「お金は銀行に預けておきなさい」が合う気
がします。
でも、日本人がどんどん金融リテラシーを身につけたら潰れる銀行や保険会社など増えるで
しょうね。
●金融に対しての興味がわいてくる、資産運用に関しての入門書
金融に対しての興味がわいてくる、資産運用に関しての入門書として読みました。
本書にありますように、国が国策として「小さな政府」を目指し、格差社会が広がっていく中で、
個々人がしっかりとした金融知識を身に付けていくことは非常に重要なことだと思います。
もちろんリスクが伴うことですので、しっかりと情報収集をし学んでいくことが大切なのですが、
本書の中に、著者推薦のホームページや書籍が紹介されております。この点も本書が優れ
ていると感じた点です。
生物と無生物のあいだ (講談社現代新書 1891)
福岡 伸一
●「日本エッセイストクラブ賞」あげてほしい
『プリオン説はほんとうか?』の著者の新書を本屋で見かけたので購入。文章うまいねぇ。すらすらと楽しく読めた。
内容は、生物学の発展のエピソード、DNAが遺伝情報の担体であること、シャルガフの通則、DNA構造、体内物質が常に置き換わっていること、などの発見の生物学的な解説と発見者の人間模様の紹介が、著者自身のアメリカでの研究生活の思い出のエッセイとともに綴られている。
生物学については、必要充分な解説が適切に示されているので、結果だけでなく、なぜそう言えるのかまで分かるのは、著者自身の深い理解がなせる技であると感じられた。
一方、著者の自伝的部分は藤原正彦の『若き数学者のアメリカ』の生物学版という風情がある。自らの研究の解説とそのときの気分の情緒的な描写のバランスが素晴らしい。それに、アメリカの研究者がどのように研究を進めているか、わが方とどこが違うかが垣間みられるのも興味深かった。
ただ、本書が新書として出版されたことに少し違和感を覚えた。生物学の素晴らしい解説書であることは100%認めるが、全体としてはエッセイとしての側面が強いと感じたのだ。文学なら文庫の方がふさわしい。この辺は、私の感じる新書の分類の方が遅れているのかもしれないが。いずれにせよ、本書が「日本エッセイストクラブ賞」をもらったら素晴らしいと思う。
●目次を紹介いたします
まずは、本書の目次を以下に示します。全15章仕立てです。
内容を勘違いして購入する人が多いみたいなので、ここから少しは内容を汲み取れると良いなぁと思います。
著者自身のポスドクのときの研究生活と重ね合わせた、分子生物学と細胞生物学の表面をなぞるお話になります。
(かっこ)内は私が付けた補足です。
プロローグ
第1章 ヨークアベニュー、66丁目、ニューヨーク(著者が降り立った地)
第2章 アンサング・ヒーロー(歌われることのない英雄)
第3章 フォー・レター・ワード(DNAのA、T、G、Cのことです)
第4章 シャルガフのパズル(DNA研究のお話)
第5章 サーファー・ゲッツ・ノーベルプライズ(PCR装置を発明した人)
第6章 ダークサイド・オブ・DNA(研究者の心の闇、疑惑など)
第7章 チャンスは、準備された心に降り立つ(どんな人間が大発見をするのか)
第8章 原子が秩序を生み出すとき(シュレーディンガーのお話)
第9章 動的平衡(ダイナミック・イクイリブリアム)とは何か
第10章 タンパク質のかすかな口づけ(くっついたり離れたり…)
第11章 内部の内部は外部である(分泌顆粒のお話)
第12章 細胞膜のダイナミズム(著者のチームの膵臓細胞の研究)
第13章 膜にかたちを与えるもの(著者のチームの膵臓細胞研究)
第14章 数・タイミング・ノックアウト(ノックアウトマウスなどのお話)
第15章 時間という名の解けない折り紙(機械と生命のちがいなど)
エピローグ(著者の感慨と感傷など…)
私は最初、この本を読む予定はなかった。ノーマークだったのだ。
しかし、この本の題名から勝手に内容を妄想して購入した家族が読んだ後に、偶然お下がりとして譲り受け、なんの先入観もなくたまたま読んでみた次第である。
かくして、家族が言うには「(題名から)想像していた本とは違った」ようであるが、私としては思いがけない掘り出し物の感あり、楽しく読め、思いがけず面白かった。
読者層として最適なのは、高校生物を学び終わった高校生から、生化学や分子生物学、細胞生物学を学ぼうとする大学教養程度ではなかろうか。
理系(特に生物系やら生命科学系、医学系など)では有名な話であるが、ワトソンとクリックのDNAの二重らせん構造の発見などの裏話が読める。
著者自身の研究生活と、科学史とが、詩的な表現によって語られる科学エッセイのような体裁であるが、生物系の研究者を目指そうかという人たちにも何らかの参考になる部分も多いと思う。
本の帯に茂木健一郎氏が推薦文を寄せているが、「福岡伸一さんほど生物のことを熟知し、文章がうまい人は稀有である。サイエンスと詩的な感性の幸福な結びつきが、生命の奇跡を照らし出す」といった内容なのであるが、確かに著者は文章がうまい。
そしてこの茂木健一郎氏の推薦文は正鵠を得ている。
この本が面白く読めた人なら、立花隆と利根川進の対談の体裁の「精神と物質」という本も面白いと思います。本書と同じ系統の本です。利根川進のノーベル賞受賞のきっかけとなった研究の詳細がわかりやすく述べられます。こちらは、高校生物ぐらいの免疫の知識があるとより面白いですね。
●分子生物学って面白い
現代の専門化した科学は、細分化されすぎて何がなんだかわからない。分子生物学だって、語り方によってはそう感じられた分野だろう。
なのに、なんて面白いのか。こんなにわかりやすく専門分野について語り、更に生物とは何か、という大テーマに迫っていく。DNAやRNAについても、適切な例えを用いて、ストンと腑に落ちた。中学校以来今まで何度も習っていながら、何ともつかみ所のない感じがしていたのに…。
理系オンチで文学馬鹿の私にも、とっても面白く読めました。知的興奮がありました。
![]()
ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書 687)
梅田 望夫
●けものみちを行く
梅田氏のけものみち論を読んで感じたことがある。
インターネットによって我々は従来一部の人しか得ることができなかったパワー=無限の知識と多数の同胞を得ることができる。そのとき自分はどんな生き方をしたいのか?
20世紀のヒーロー像がスーパーマンをはじめとする特殊な力のヒーローであるとすれば、21世紀は集団知識のヒーローが出現する。
その根底にあるものは「ナンバーワンよりオンリーワン」と歌い、けものみちの生き方を日本中に示した「世界に一つだけの花」をつくった槇原敬之の名曲「THE GIFT 僕が一番欲しかったもの」の精神である。わらしべ長者のように人間関係を豊かにすることが「正しいときに正しい場所にいる」ことにつながることは小杉俊哉著「ラッキーをつかみ取る技術(光文社新書)」を思い出させた。
その参加者は「自助の精神」を持つべしとある。田坂広志著「なぜ、働くのか(PHP文庫)」の中で、人生の砂時計の落ちる音を聞きながら最後の瞬間まで「答えのない問を問い続けることだ」と通じるところを得た。
つまり、インターネットワールドにより、従来は一部の人しか得ることができなかった生き方(歌や本にあるような経験)が、誰もが、それを望めば現実化できる時代が目前に来ていることを梅田望夫氏は読者に開眼させる。
けものみちは個性豊かな私達に新たなヒーロー像をもたらす道ではないか。
●バーチャルがリアルに
同著者による『ウェブ進化論』の続編。前著ではグーグルの誕生からその存在意義、社会にもたらされる利益や変化などをわかりやすく紹介した。本書ではウェブシステムによって発生した社会の変化を紹介すると同時に、企業のあるべき姿、個人の価値観や生き方について考察している。対象読者は前著を読んでいるか、またはある程度ウェブ用語を理解していることが前提。
記載の多くが事実に基づいての考察であると同時に、前著に対する書評などを調べた上で、客観評価して再考察していたり、新たに焦点を絞ったりしているように、まさにウェブによって本書(著者の意見)も進化していることが理解できる。また、性善説に基づいた楽観的な予測がほとんどであるが、読者に不安を感じさせない説得力がある。
本書で注目すべき点は、ウェブの仮想世界(バーチャル)が、情報量では現実世界(リアル)と対等になる一方で、伝達速度が瞬時であるために、情報の集約が正確になることである。例えば、広告料金の費用対効果などはリアル世界ではその客観性・信憑性に乏しかった(つまり幻想であった)のが、バーチャル世界ではリアル(ごまかしのきかない現実)になるのだ。
また、現在の多くの社会人は、バーチャル世界とリアル世界を別個に認識しているが、これから生まれてくる世代にとっては双方併せて一つの世界であるばかりでなく、バーチャル世界での仕事や交流などに人生の大半の時間を費やすことも予想される。したがって、バーチャル世界を受け入れ、柔軟な対応が迫られる。
一方、ウェブによる情報社会の到来を高速道路に喩えた羽生二冠の論を紹介し、出口付近の渋滞を乗り切ることがプロの扉を開くとしており、これも説得力がある。しかし、氾濫する情報のうち適切なものを得る際の手法を嗜好に合わせるのみでは問題があるように感じた。
例えば、単純に検索数が情報の正しさや客観性を示すわけではない。カルト情報などを見極める能力が先行すべきであり、論理的思考が可能な状況を築いた上で、という条件が高速道路にのる以前に必要と感じる。
本書は非常に面白い情報が多く、基本的には良書と思う。ただし、ロングテールなど、前著では紹介されているが)注釈無しの用語もあって、独立した書としては読者が限られてしまう可能性がある。
●次なる提示
「こちら側」「あちら側」でWEB2.0の確固たるイメージを示した著者が新しい提示を行った一冊。
「もうひとつの地球」が今回のキーワード。
インターネットがより確実に世界に浸透している。
様々な情報が集まっている。そこで行われるコミュニケーション。
より便利なものから、確実に新しい世界として結実しつつある世界。
それが「もうひとつの地球」という言葉で実を結ぶのだろうか。