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ウェブ時代をゆく 梅田 望夫

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書 687)
梅田 望夫

●けものみちを行く
梅田氏のけものみち論を読んで感じたことがある。
インターネットによって我々は従来一部の人しか得ることができなかったパワー=無限の知識と多数の同胞を得ることができる。そのとき自分はどんな生き方をしたいのか?

20世紀のヒーロー像がスーパーマンをはじめとする特殊な力のヒーローであるとすれば、21世紀は集団知識のヒーローが出現する。

その根底にあるものは「ナンバーワンよりオンリーワン」と歌い、けものみちの生き方を日本中に示した「世界に一つだけの花」をつくった槇原敬之の名曲「THE GIFT 僕が一番欲しかったもの」の精神である。わらしべ長者のように人間関係を豊かにすることが「正しいときに正しい場所にいる」ことにつながることは小杉俊哉著「ラッキーをつかみ取る技術(光文社新書)」を思い出させた。

その参加者は「自助の精神」を持つべしとある。田坂広志著「なぜ、働くのか(PHP文庫)」の中で、人生の砂時計の落ちる音を聞きながら最後の瞬間まで「答えのない問を問い続けることだ」と通じるところを得た。

つまり、インターネットワールドにより、従来は一部の人しか得ることができなかった生き方(歌や本にあるような経験)が、誰もが、それを望めば現実化できる時代が目前に来ていることを梅田望夫氏は読者に開眼させる。
けものみちは個性豊かな私達に新たなヒーロー像をもたらす道ではないか。

●バーチャルがリアルに
同著者による『ウェブ進化論』の続編。前著ではグーグルの誕生からその存在意義、社会にもたらされる利益や変化などをわかりやすく紹介した。本書ではウェブシステムによって発生した社会の変化を紹介すると同時に、企業のあるべき姿、個人の価値観や生き方について考察している。対象読者は前著を読んでいるか、またはある程度ウェブ用語を理解していることが前提。

記載の多くが事実に基づいての考察であると同時に、前著に対する書評などを調べた上で、客観評価して再考察していたり、新たに焦点を絞ったりしているように、まさにウェブによって本書(著者の意見)も進化していることが理解できる。また、性善説に基づいた楽観的な予測がほとんどであるが、読者に不安を感じさせない説得力がある。

本書で注目すべき点は、ウェブの仮想世界(バーチャル)が、情報量では現実世界(リアル)と対等になる一方で、伝達速度が瞬時であるために、情報の集約が正確になることである。例えば、広告料金の費用対効果などはリアル世界ではその客観性・信憑性に乏しかった(つまり幻想であった)のが、バーチャル世界ではリアル(ごまかしのきかない現実)になるのだ。

また、現在の多くの社会人は、バーチャル世界とリアル世界を別個に認識しているが、これから生まれてくる世代にとっては双方併せて一つの世界であるばかりでなく、バーチャル世界での仕事や交流などに人生の大半の時間を費やすことも予想される。したがって、バーチャル世界を受け入れ、柔軟な対応が迫られる。

一方、ウェブによる情報社会の到来を高速道路に喩えた羽生二冠の論を紹介し、出口付近の渋滞を乗り切ることがプロの扉を開くとしており、これも説得力がある。しかし、氾濫する情報のうち適切なものを得る際の手法を嗜好に合わせるのみでは問題があるように感じた。

例えば、単純に検索数が情報の正しさや客観性を示すわけではない。カルト情報などを見極める能力が先行すべきであり、論理的思考が可能な状況を築いた上で、という条件が高速道路にのる以前に必要と感じる。

本書は非常に面白い情報が多く、基本的には良書と思う。ただし、ロングテールなど、前著では紹介されているが)注釈無しの用語もあって、独立した書としては読者が限られてしまう可能性がある。

●次なる提示
「こちら側」「あちら側」でWEB2.0の確固たるイメージを示した著者が新しい提示を行った一冊。
「もうひとつの地球」が今回のキーワード。
インターネットがより確実に世界に浸透している。
様々な情報が集まっている。そこで行われるコミュニケーション。

より便利なものから、確実に新しい世界として結実しつつある世界。
それが「もうひとつの地球」という言葉で実を結ぶのだろうか。




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